とあるコンテストへ応募した作品です。(24.1.20締め切り分)
文章力向上の取り組みとして挑戦しました。
拙い文章ですが、よろしければご賞味ください。
不機嫌なスモーカーたちがひしめく一畳半
衝立だけだがその小綺麗な外観で
世間の目からはうまく紛れられている
昼休み 一心不乱にそこを目指す
助かった 知り合いはいない
束の間だが できないことをしなくていい
火の無いところに煙を立てようとせずに済む
今日は同じようなスーツの男が三人いた
一様に壁へ身を預けながら スマホを片手に
燻らせていた 待望の開演まで待つように
どうかしているのはわかっている だが
佇まいに惹きつけられてしかたがなかった
有難味は無くしてから思い知らされる
心に火が灯るひと時が わたしにはもう
間が持たず持合せの煙草へ次々に火をつける
吹きさらす風に時折ゾクリとし出した
いよいよ叫びたくなるのをこらえつつ
背中をまるめて一人うつむく
何かの拍子に足元から崩れ去ってしまう前に
どこか遠くへ 紛れさせて
そんな思いを煙に乗せようにも
浅切れの吐息はか細すぎたし
この銘柄では唱え終えるには短すぎた
刻限が迫ってもよおす吐き気
構わず火を消し また人々へ紛れる
夕暮の風が平熱を削いでいく
それほど弱った心に人という熱源は強すぎる
「大丈夫、必ず良くなるから無理しないで」
「こちらは袋に入れますか?レシートは?」
「気づけずごめんよ、後はゆっくり休もう」
顔の面一枚で嘯き返しながら 摺りつぶれた
衝立も無い今 紛れて消えるなど簡単だった
ポケットの煙草の行方はもう分からない
箱部屋にこもり 今や夜だけになって久しい
四肢と胴体は床に張りついてしまった
重苦しい天井 いい加減に目を背けようと
唯一動かせる首で 部屋をゆっくり回した
この瞬間か あるいは最初からか
疑わしいほど見事な擬態 棚にしんと佇んだ
その背表紙には代表たちが整列していた
別に稲妻が走ったなんてことはない
もちろん誰かの声に脅されたわけでもない
ただ知った このときから始まった真実を
君たちを改めて見つけたのは偶然じゃない
拒んだのは誰 なら手を伸ばすのも自分だけ
どうだい 怖いかい 信じられないかい
この熱も実体も個性も無しに つける火など
人との決定的な差は しがらみがないところ
縛り縛られる都合などありはしない
あなただけを待ち続ける 完全人任せ主義者
照れくさいが 君たちこそお伽話の王子様だ
なぜならわたしを迎え 目覚めさせてくれた
こうなってはヤニより認めざるを得ない
字がない時分に 心地よい日は始まらない
ほらね あなた次第なのだから